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図書館古典籍類所蔵資料目録
タイトル
坤輿萬國全圖 6卷
タイトル(ヨミ)
コンヨ バンコク ゼンズ
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(明)利瑪竇(Ricci, Matteo)撰 (明)張文〓校
著者名
利瑪竇(利瑪竇. 1000563)
張 文〓)
張 文〓)
出版事項
刊本 萬暦30年 北京 李之藻
法量
(167.9-169.0)×(62.4-62.9)cm
数量
6軸
注記
 
別タイトル注記
 
内容注記
 
印記注記
 
出版年注記
1602
解説
イタリア人マテオ・リッチ(中国名利瑪竇)による世界図。リッチは1582年,イエズス会宣教師として明代の中国にわたって,翌年肇慶に到り,八四年,肇慶の知府(総督)〓王〓の依頼によってヨーロッパ製の世界図をもとにして,中国里や中国時,そして中国語で地名を記した地図を作製した。リッチが肇慶に建てた「遷花寺」(王〓によって名づけられた)には多くの学者たちが訪れたが,彼らが殊に興味を示したのは,その中にあった西欧製の世界図であったという。それは,この地図がそれまで彼らが接してきた中国の世界図と違って,中国が世界の中心にある唯一の大国ではなく,この世界には中国のほかにも多くの国々が存在することを表していたからである。人々はリッチにこの地図についての解釈を求め,それが真実であることを認めざるをえなかった。王〓の要請はそうした背景をもって行われたのであった。この世界図は『山海輿地図』と名づけられたが,誤りも多かった。そのことに加え中国の人々がこの地図に驚嘆し,ひいてはヨーロッパ文明に大きな関心を持ったことは,この国でキリスト教を布教するのに役立つと考えたことからリッチは,これ以降何度も改訂を重ねた。リッチ死後に刊行されたものも含めて十六種が知られているが,萬暦三十年(日本暦慶長三年,西暦1602)北京において明朝の高官,李子藻の助力によって刊行したいわゆる「李子藻版」が,この『坤輿万国全図』六幅である。刊行第八番目にあたるこの世界図を,リッチはほぼ会心の作であるとしている。中国人のこれまでの知識をはるかに越えた内容を持ち,五大洲説と地球説を明瞭に表しているこの世界図の特色は,単なる<地図>にとどまらず,多分に地理書的な性格を持っていたことである。この地図で世界は亜細亜,欧羅巴,利未亜(アフリカ),南北亜墨利加,墨瓦蝋泥加(オーストラリアと南極が一緒になっている大陸)に分けられ,それぞれについてその範囲と地理的特色が述べられている。さらに各国毎に注記か施されているが,必ずしも正確ではなくいわば現実と想像・伝聞が入り混じった記述になっている。例えば,日本については「日本乃海内一大島。長三千二百里寛不過六百里。今有六十六州。各有国主。俗尚強力雖有総王。而権常在彊臣。其民多習武少習文。土産銀鉄好漆。其王生子年三十以王譲之。其国大抵不重宝石只重金銀及古窯器」としている。また,地図上の地名の記載は北海道の位置に佐渡や北陸道,能登,越中後,加賀が,陸奥が房総半島に,常陸や武蔵が津軽附近にあったりするが,全体の輪郭はおおむね正確である。ヨーロッパについての記述では,「一切異端不従。而独崇奉天主上帝聖教。云々」,またリッチの故国イタリアについては「此方教化王。不娶。専行天主之教。在羅馬国。欧羅巴諸国。皆宗之。云々」と,ヨーロッパにおけるカソリックの力を表現している。さらに世界図の欄外には,天文や地理に関する論説が記され,第六幅目には日・月蝕の図と,南北極を中心とした半球図が載せられてある。この地図によってリッチは,中国の人々がそれまで考えていたように,中国は世界の大部分を占めているのではなく,あくまでも広大な地球の一部に過ぎず,さらにその地球もまた宇宙のほんの一粒でしかないということを示した。そのことによって,宣教師マテオ・リッチは,その宇宙を創造したキリスト教における神の偉大さを説こうとしたのである。しかし中国や(やがてこの地図に接することになる)日本の人々は,何よりもこの世界図に盛られた15~16世紀のヨーロッパによって為し遂げられた,いわゆる<大航海時代>の成果を一挙に知らされることになったのである。それ迄は僅かの知識と狭い範囲でしか世界を考えることのできなかった人々の眼前に,思いも及ばなかった広がりと多様さを持つ世界が具体的な姿をとって展開されたのであった。こうしたことから,この世界図は東アジアの地域に住む人々の世界観の転回のための重要な指標になったと言われている。この『坤輿万国全図』は,現在のところ私蔵のものを別にして,ヴァチカン,京都大学,そして宮城県図書館の3館に,世界図の部分を切り取って貼り直したものが内閣文庫に所蔵されていることが知られている。また京都大学蔵のものは,第1軸に2個,第6軸に1個印刷されてあるイエズス会のマークがすべて削り取られているが,宮城県図書館蔵のものは,3個共そのまま残されている完全な刊本である。昭和51年(1976)次の写本と共に宮城県重要文化財に,平成2年(1990)には国重要文化財に指定された。この世界図がどのようにして宮城県図書館蔵になったか詳細は不明であるが,おそらく,すぐれた洋学者の多かった仙台藩の天文方にあったものが,藩学養賢堂をとおして入ったものと推定されている。この解説は,船越昭生『「坤輿萬國全図」と鎖国日本―世界的視圈の成立―』(『東方学報』四一 京都大学人文科学研究所 昭和45)によった。
国総目分類
 
コレクション
一般古書
冊子体目録
E:『宮城県図書館所蔵絵図・地図解説目録』1090
請求記号
20179
台帳番号
 
代替資料の有無
無し
文献ID
61694
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